(「みさとやくみぜん」認定講習会テキストより)
1. 構想の背景
食生活の変化などにより米の消費量は減少し、また、地域農業を取り巻く環境や制度の変化を踏まえ、魅力ある農業の維持・構築のため、現状では経済性を持たない土地を活用した米以外の新たな特色のある作物の栽培に取り組む必要があります。
そこで美郷町(以下「町」といいます。)では、甘草をはじめとする薬用植物の栽培に着目しました。
高齢化社会の進展により漢方薬の需要は今後着実な伸びが見込まれておりますが、現状では、原料となる生薬はその大半を中国からの輸入に頼っています。また、最近は中国の国内事情により「第二のレアアース化」が懸念されるなど、生薬業界にとっても輸入品に代わる安全・安心な国産生薬の生産は、一つの選択肢として魅力ある取り組みといえます。
町の歴史をひも解いてみると、江戸時代に秋田藩の薬園で栽培されていた甘草の苗は、以前から六郷で育てられていたものであり、また、六郷町史には、甘草を成分とする日本人に馴染みの深い「龍角散」の創製者である秋田藩ゆかりの藤井父子は六郷の出身であるとの記述があります。これも何かの縁。こうした歴史を背景に、優良生薬の確保と振興を掲げる社団法人東京生薬協会(以下「協会」といいます。)と町が連携し、入口(生産)・出口(商品化)を相互に確認しあいながら、国産生薬の安定供給に取り組むこととしました。
2. 構想の目標
“ 生薬の里 美郷” 構想では、「1. 構想の背景」を踏まえ、次のすがたを実現することを目標とします。
(1)遊休資産を活用した生薬の国内調達モデルの構築と実践
遊休農地や山林を活用した生産から出荷までの一連の体制整備により国産優良生薬の安定供給を実現します。
(2)生薬を交流・産業資源として活用した協会の社会貢献と町の活性化
協会は、生薬を通した町との交流により、協会としての地域への社会貢献の実現と産業資源としての活用による町の活性化を実現します。
3. 構想の推進期間
“ 生薬の里 美郷” 構想は、長期的な視野に立って実現するものとし、推進期間は、2012年度(平成24年度)を初年度とし、2021年度(平成33年度)までの10年間とします。
4. 目標達成のための基本計画
構想の目標達成のために、基本的な施策の方向や主な事業を明らかにするための基本計画を次のとおりとします。
(1)基本計画の期間
前期と後期に区分し、後期基本計画については、前期終了前に計画の実績及び進捗状況等を勘案し、見直しを行うものとします。
前期:2012年度~ 2016年度
(平成24年度~平成28年度)の5年間
後期:2017年度~ 2021年度
(平成29年度~平成33年度)の5年間
(2)基本計画の施策と内容
① 生薬の生産・出荷体制づくり
○甘草をはじめとする薬用植物の試験栽培を行い、町の栽培環境に適した薬用植物を選定します。
○選定した薬用植物について、試験栽培の結果、医薬品の規格等の条件をクリアしたものから本格栽培を行います。
○町有林の有効活用を図るため、栽培環境に適した薬樹の計画植林を行います。
○収穫された薬用植物を現地で乾燥・調製し、生薬として出荷する体制を検討し、必要に応じた施設・設備の整備を行います。
② “ 生薬の里 美郷” のイメージづくり
○“生薬の里 美郷”のシンボルとして、地域住民の憩いの場となる平場の森(薬樹園)を整備します。
○平場の森を活用した計画植樹を行います。
○シンポジウムなどの開催により生薬に関する情報の発信を行います。
③ 生薬を活用した交流プログラムづくり
○平場の森を活用した計画植樹を行います。(再掲)
○シンポジウムなどの開催により協会会員等との交流を行います。
○既存の資源(清水・ラベンダー)などと併せた集客プログラムを展開します。
④ 薬用植物を活用した特産品づくり
○町内企業や農業者による薬用植物を活用した新たな特産品の開発を支援します。
5. 年度別事業計画
各年度の事業計画については、前年12 月を目途に作成し、事業を展開します。
6. 構想の推進体制
薬用植物の国内栽培化に関する課題(優良生薬の種苗の確保、効率的栽培地の確保、栽培者への研修、輸入品との価格競争等)の検討も踏まえながら、実現可能性の高い施策構築を目指し、状況に応じて推進体制を整備し事業を進めていきます。
みさとやくみぜん
秋田県美郷町が進めている、「生薬の里構想」に呼応して、生薬をより身近なものになるように、薬膳料理や薬味酒のことを、楽しく健康的に研究する会です。
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